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【弁護士が解説】中小企業の経営トップが知っておくべき「役員の善管注意義務」と損害賠償リスク

 5月に入り、3月決算の企業では翌月に控えた定時株主総会に向けて、計算書類の作成や役員人事の検討など、経営体制を見直す時期を迎えていることでしょう。

 中小企業の場合、社長(代表取締役)が全株式を保有しているケースも多く、「会社=自分のもの」という感覚を持ちやすい傾向があります。しかし法律上、会社と役員は明確に別の人格であり、役員は会社に対して重い法的な義務を負っています。これを軽視すると、最悪の場合、役員個人が巨額の損害賠償責任を負うリスクが潜んでいます。今回は、中小企業の経営陣が知っておくべき「役員の責任」について弁護士が解説します。

1.「会社と社長は別物」役員が負う「善管注意義務」と「忠実義務」

 会社法上、会社と取締役の関係は「委任契約」とされています(会社法330条・民法644条)。そのため、取締役は会社に対して「善良な管理者の注意義務(善管注意義務)」と「忠実義務」(会社法355条)を負うことになります。簡単に言えば、「会社の利益を第一に考え、専門家として期待される十分な注意を払って職務を行いなさい」「私利私欲のために会社に損害を与えてはいけません」というルールです。

  中小企業で特に問題になりやすいのが、「会社と個人の財布の混同」です。例えば、社長の個人的な飲食代や旅行代を会社の経費として処理したり、会社の資金を無利息で個人に貸し付けたりする行為は、会社への忠実義務・善管注意義務違反に問われる典型的なケースです。万が一、経営破綻や株主とのトラブル(親族間での経営権争いなど)が発生した際、これらの行為が発覚すると、会社から役員個人に対して損害賠償を請求される(会社法第423条)事態に発展します。

2.失敗=即責任ではない?「経営判断の原則」と第三者への責任

 もちろん、経営には常にリスクが伴います。新規事業への投資が失敗したからといって、すぐに善管注意義務違反になるわけではありません。法務実務においては「経営判断の原則」という考え方があり、判断当時の状況において、情報収集や意思決定のプロセスが合理的であれば、結果的に会社に損害が生じても責任は問われないとされています。ただし、この原則が適用される余地は限定的であり、過度に依拠することは危険です。

  しかし、「十分な調査をせずに思いつきで巨額の投資をした」「明らかな法令違反(コンプライアンス違反)を黙認して事業を進めた」といった場合は、この保護の対象外となります。

  さらに恐ろしいのが、第三者に対する損害賠償責任(会社法第429条)です。役員が役員としての任務を怠った結果としてその職務を行うについて「悪意または重大な過失」があった場合、会社だけでなく、取引先や債権者といった第三者に対しても直接、損害賠償の責任を負わなければなりません。「会社が倒産したから支払いできません」では済まず、社長個人の財産(自宅や預貯金)が差し押さえられるリスクがあることを認識しておく必要があります。

3.同族会社に多い落とし穴:「利益相反取引」と「名ばかり役員」の監視義務

 同族会社(ファミリー企業)において、特に注意すべき落とし穴が2つあります。

利益相反取引

「社長個人の所有する不動産を、会社が高値で買い取る」「会社の事業の一部を、社長の親族が経営する別会社に有利な条件で委託する」といった取引です。これらは会社に不利益をもたらす危険が高いため、事前に取締役会(取締役会非設置会社では株主総会)で重要な事実を開示し、承認を得る必要があります(会社法356条・365条)。適法な手続きを怠ると、取引が無効になるだけでなく、任務懈怠として責任を問われます。

 ●「名ばかり役員」の監視義務

節税対策や対面上の理由で、経営に全く関与していない配偶者や親族を取締役として登記しているケースは少なくありません。しかし法律上、取締役は他の役員の業務執行を監視する「監視義務」を負っています。「私は名前を貸していただけで何も知らない」という言い訳は通用せず、代表取締役の不正や違法行為を放置したとして、同等の連帯責任を負わされる判例(最高裁昭和48年5月22日判決等)も多数存在します。

まとめ:経営を守るための「適正なガバナンス」を

 「中小企業だから、細かい法律は関係ない」という考えは、もはや通用しない時代です。役員としての重い責任を正しく理解し、適法な手続き(議事録の作成や承認手続き)を日頃から徹底することが、結果的に社長自身やご家族の大切な財産を守ることへと繋がります。

  当事務所では、定時株主総会の招集・議事録作成サポートから、新規取引における役員の法的リスク診断、同族会社特有のガバナンス(企業統治)の整備まで、経営トップの皆様が安心して事業に専念できるよう法務面から丁寧にサポートいたします。「今の経営体制や過去の取引に法的なリスクはないか?」と少しでもご不安をお持ちの経営者様は、ぜひ一度、当事務所の弁護士にご相談ください。

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