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よくある残業代トラブルとは?
昨今、従業員から未払い賃金があるとして残業代請求をされる事案が増えています。具体的には、以下のようなケースがあります。
- 従業員が会社とトラブルになって弁護士に相談に行ったところ、残業代の未払いを指摘された
- 退職する際に、突如残業代請求をされた
- 固定残業代制が有効ではないとして、残業代請求をされた
- 従業員が労働基準監督署に相談し、労基署を通じて残業代請求をされた
- 始業前の早出勤務分の賃金が支給されていなかったとして請求をされた
- 30分単位で労働時間を管理していたら残業代請求された
会社には、時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金と、所定労働時間を超えて働いた法定内残業に対する賃金を従業員に支払う義務があります。未払いが発生している場合は、これを従業員に支払わなければなりません。
また、残業代請求を放置すると、労働基準監督署の調査を受ける、労働審判や訴訟を起こされるなど紛争レベルが上がる可能性があります。それだけではなく、遅延損害金が膨らんだり、悪質なケースでは裁判所より制裁として付加金として倍額の支払いが命じられるなど、状況がさらに悪化するリスクを負います。
また、このような事案において、弁護士等の専門家に相談することなく残業代の支払い等を行ったものの、その後まだ未払額があるとして裁判に発展するケースもあります。紛争を終局的に解決するためには、ポイントを押さえた対応が必要です。
以下、残業代請求対応について、みていきます。
従業員から残業代請求された場合の対応方法
従業員から未払いの残業代があるとして、請求された場合、以下の手順を踏んで対応してください。
① 請求内容が妥当か計算する
② 従業員と和解するのか、反論するのか検討する
③ 従業員との和解で解決を目指す
④ 訴訟や労働審判に移行して解決を目指す
以下、順番に見ていきましょう。
従業員からの請求内容が妥当か計算する
残業代請求をされた場合、まずはその請求内容が妥当かを確認します。従業員によっては未払の残業代を計算した上で具体的な金額を請求してくる場合と未払残業代があるというものの具体的な額は記載せず会社に計算をするよう請求してくる場合とがあります。
いずれの場合であったとしても、まずはタイムカードや業務日報、労働契約書、労働条件通知書、就業規則、給与明細書などを確認しながら未払いの残業代があるのか、あるとしていくらなのかを計算していきます。
また、従業員の請求額に、休憩時間まで含まれていないか、業務命令が出ていないのに無断で始業前の早出時間に出勤して勤務したことにしていないか、終業後毎日のように長時間雑談をしてその後タイムカードを押して退社しその時間まで含めて請求していないか、固定残業代制度が有効なのに無効を前提として請求していないかなど、適切な労働時間の範囲内で計上しているかを検証します。
また、後述するように、2020年4月1日以降の未払い賃金(残業代を含む)は3年間で消滅時効が完成するため、消滅時効が成立している期間も請求してきていないかなどをチェックします。
但し、残業代の計算は会社が計算した場合に誤っていることもままあり、この時点から専門家に相談することで、正確な残業代を計算することも視野に入れるべきです。
従業員と和解するのか反論するのか確認する
以上の計算を踏まえて、会社として、従業員の請求を認める方向で協議するのか、請求額の一部または全部を争う方向で反論するのかを決めます。
上述の残業代の計算方法についての法律の考え方や労働時間かそうでないのかの事実認定は意外に複雑で専門的な評価が必要なため、方針決定の際に弁護士の意見を聞くことも重要です。
従業員の請求にある程度法的根拠がある場合、紛争が長引くと遅延損害金が膨らんだり、裁判に移行して判決を取られた場合に悪質事案と判断されて付加金の支払い命令が出され支払額が倍額になることもあるため、その点も考慮して方針を決めるべきです。
従業員との和解で解決を目指す
方針が決まったら、早期に従業員側と協議を開始します。争いになる事項がある場合、そこについて法的主張や事実の証拠を提出することでいずれの主張が正しいかを整理していくこともあります。
合意内容が決まったら、必ず書面にして弁護士の確認を経てから調印してください。調印後に残業代の支払という流れになります。
書面で合意しないと、後日新たに残業代の未払いが発覚したなどとして、更に請求が来るケースもありますのでご注意ください。
訴訟や労働審判に移行して解決を目指す
協議による解決が困難な場合は、訴訟または労働審判に移行します。
訴訟は他の事件類型と同様、訴訟提起から1か月くらいで第一回裁判が開かれ、その後は約1か月毎に裁判が開かれ、毎回双方の言い分と証拠を提出してどちらの言い分が正しいか、または有力かを整理していきます。裁判上でも双方の歩み寄りによる和解は可能ですし、和解に至らなければ、関係者の尋問を行った後、判決が下されます。判決の場合は、残業代請求に特徴的な付加金の支払いが命じられる可能性があるため、注意が必要です。
労働審判は、裁判所を介して早期解決を目指す制度で、3回以内の審理で解決や審判までいきます。進行が早い分、突如として労働審判を起こされた会社側は準備がかなり大変になりますし、裁判や労働審判を当事者のみで行うのはほぼ不可能なので、直ぐに専門家に相談なさってください。
訴訟や労働審判は、法と証拠によってその帰趨が決まりますが、労働基準法は労働者保護の法律であり、裁判所でも労働者重視で審理が進む傾向にあります。
従業員から残業代請求をされた際に会社が気をつけること
従業員から残業代を請求された場合、以下の4点にご留意ください。
① 残業代請求を放置しない
② 消滅時効の更新
③ 労働基準監督署への対応
④ 労働時間の管理体制の見直し
以下、順番にみていきます。
残業代請求を放置しない
上述したように、残業代請求を放置すると遅延損害金が膨らみ、また裁判になると付加金が認められて倍額の支払義務になってしまう場合もあります。
また、労働基準監督署が介入してきて悪質な事案と判断されると刑事事件に発展し、刑事罰を受けるケースもあります。また、訴訟や労働審判に発展することもあり、その場合はすぐに弁護士に依頼する必要があります。
このように、残業代請求を放置すると状況が悪化していきますので、請求がきたら放置しないようにしましょう。
残業代請求による消滅時効の更新
残業代請求は、支払期日から3年経過すると消滅時効が完成します。
但し、残業代請求がなされると、催告として時効の完成が請求の到達日から6か月間猶予されます。従業員はその間に訴訟提起か労働審判を提起すれば消滅時効を更新させる(主張できなくさせる)ことができてしまいます。
尚、労働審判や裁判での判決が確定すると確定した日から10年間時効が延長されます。
労働基準監督署への対応
労働基準監督署から残業代の未払いに関する指摘が来た場合、真摯に対応する必要があります。調査の結果、法律違反が発覚した場合は、是正勧告を受けることがあります。また、法令違反はなくとも、改善の必要がある場合は指導がなされます。
また、労働基準監督署は、悪質なケースでは刑事事件として捜査をし、最終的には検察官が刑罰を科すために起訴するか否かを決めます。刑事事件になった場合は、捜査に真摯に対応するとともにすぐに弁護士にご相談ください。
労働時間の管理体制の見直しの実施
残業代請求が一部でも妥当な場合、再発防止のために社内の労働時間の管理体制を見直す必要があります。
タイムカードが始業時間と終業時間ではなく、出勤時間と退勤時間に打刻されて正確な労働時間を反映していない場合は従業員に周知して是正する必要があります。
労働時間を1分単位ではなく30分、1時間単位などで計算している場合はこれを是正し、実際の労働時間を計算する仕組みに変える必要があります。
固定残業代制度の設計や規定、給与明細書の記載などが不明確で有効性に疑問がある場合は専門家と協議して再設計をする必要があるでしょう。
また、会社は残業を必要としていないのに漫然と残業が横行している場合は許可制に変更する、許可制なのに実務上は機能しておらず無許可残業が横行している場合は制度を厳格に適用する、などの見直しも必要です。
残業代請求を通じて発覚した改善事項を早期に改善することで、経験値を力に変えていく必要があります。
残業代請求をされた際に弁護士に依頼するメリット
以上のように、残業代請求は、法に基づく残業代の計算、労働時間といえるかの事実認定、固定残業代制度の有効性、和解方向か反論方向かの判断、和解契約書に盛り込むべき内容の検証、長期化することで起こりうるリスクの検証、労働基準監督署を通じた刑事事件化など、当事者では対応が難しい事項が山積しています。
弁護士はこれらのあらゆる側面において対応が可能で、残業代請求をされた場合 は、まずは弁護士に相談することをお勧めします。
労働基準監督署を通じた請求に対し、単に残業代を計算して支払っただけで書面の調印をしていなかったところ、後日弁護士がついてさらに残業代を請求され、裁判にまで発展したというケースもままあります。
当事務所の強み・当事務所がサポートできること
当事務所は創業当初から残業代請求の対応を重ねて数々の交渉、訴訟を経験してきました。
残業代請求が来た場合、争うべきポイントがいくつか類型化されており、①労働時間として認定ができるか(休憩時間、早出勤務の必要性、実際に残業をしていたのか否か)、②会社の指示による残業か、無断労働か、③管理職として残業代請求を否定できないか、④固定残業代制度は有効か、⑤消滅時効が成立していないか、⑥裁判になった場合の付加金支払いリスクがどの程度あるかなどを一つずつ検証していき、会社にとって最善の方法を見極めていきます。
当事務所には、残業代請求に精通した弁護士とパラリーガルの専門チームもあるため、対応がスムーズです。
残業代請求をされたら、まずは当事務所にご相談ください。
残業代請求の対応に関するご相談は法律事務所Sまで
当事務所は、200社を超える法律顧問と3000ケースを超える企業法務の相談実績から、残業代請求対応に豊富な対応実績があります。ご相談の際は、以下のお問合せフォームまでお願いいたします。
また、企業法務全般において日々経営者や法務部等とコミュニケーションを重ねることで問題事例の拡大を防ぎ、法的紛争を未然に防ぐ法律顧問契約が効果的です。法律顧問契約についても、お気軽にお問い合わせください。

