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お盆休みに家族で話し合う「事業承継」:親族内承継における遺留分と種類株式の活用

 8月のお盆休みは、普段は離れて暮らす家族や親族が集まる貴重な機会です。中小企業の経営者様にとって、このタイミングこそ、将来の「事業承継」について本格的に家族と話し合うベストな時期と言えます。事業承継、特に子どもや親族に会社を引き継ぐ「親族内承継」は、単に後継者を決めるだけでなく、法的な経営権(自社株)の分散や、他の兄弟姉妹との財産分配といった「遺産相続」の問題と深く結びついています。今回は、後継者へのスムーズなバトンタッチを実現し、将来の親族間紛争を防ぐための法的なポイントを解説します。

1. なぜ事業承継は紛争になるのか?同族会社における「自社株」の罠

 中小企業の経営者にとって、会社の「株式(自社株)」は、単なる投資対象ではなく、会社の経営権そのものです。自社株の大部分を後継者が保有していなければ、重要な経営判断(役員の選任や利益処分など)を迅速に行うことができなくなります。

 しかし、ここで問題になるのが「相続人同士の不公平感」です。中小企業の資産の大部分が「自社株」と「会社の事業用不動産」であるケースは非常に多く、後継者の子どもにこれらをすべて相続させると、他の子どもたち(後継者ではない兄弟姉妹)に分ける財産(現預金など)が残らないという事態が発生します。これが、お盆には仲良く集まっていた家族が、相続の瞬間に骨肉の争いを始めてしまう最大の原因です。

2. 他の兄弟からの請求に備える!「遺留分(いりゅうぶん)」の対策

 後継者ではない子どもたちには、法律上、最低限の遺産を受け取る権利である「遺留分(いりゅうぶん)」が認められています。経営者が遺言で「自社株はすべて後継者の長男に譲る」と書いていても、他の兄弟が長男に対して「自分の遺留分の金額に見合う現金を支払え(遺留分侵害額請求)」と求めてきた場合、長男はそれを拒否できません。

 長男に手元資金がなければ、せっかく引き継いだ会社の株を売却せざるを得なくなったり、会社の資金を無理に引き出して経営を悪化させたりすることになります。

 このリスクを回避する法的な手段として、「経営承継円滑化法に基づく遺留分の特例」があります。これは、経済産業大臣の認定と家庭裁判所の許可を得ることで、後継者に贈与した自社株を遺留分の対象から完全に「除外」する、あるいは株価を固定することができる強力な制度です。お盆の話し合いを機に、こうした制度の利用を検討すべきです。

3. 経営権と財産権を分離する「種類株式(しゅるいかぶしき)」の活用

 「自社株を特定の誰かに集中させたいが、他の子にも財産的なメリットは与えたい」、あるいは「後継者に経営を任せたいが、自分(現経営者)も当面は重要な決定に対する拒否権を持っておきたい」といった複雑なニーズに応えるための強力な法的手続きが「種類株式(しゅるいかぶしき)」の導入です。会社法では、通常の株式とは異なる権利を付けた特別な株を発行することができます。

無議決権株式(むぎけつけんかぶしき)

 「会社の経営(議決権)には口出しできないが、配当金は多くもらえる」という株です。これを後継者以外の親族に相続させることで、経営権の分散を防ぎつつ、不公平感を解消できます。

拒否権付株式(黄金株)

 「特定の重要事項について、この株を持つ人の同意がなければ決定できない」という株です。現経営者がこれを1株だけ持っておくことで、後継者に大半の株を譲って代表を退いた後も、会社が暴走した際のブレーキ役として機能させることができます。

まとめ:家族が笑顔で集まり続けるための「生前対策」を

 事業承継の準備には、平均して5年から10年の期間が必要と言われています。経営者が元気なうちに、かつ家族が冷静に話し合えるお盆の時期から少しずつ意思を伝え、法的な対策を進めておくことが、残される家族への最大の愛情であり、会社を長生きさせる唯一の道です。

  当事務所では、遺言書の作成や遺留分対策(特例の申請手続き)、自社株の集約に向けた種類株式の設計など、親族内承継に伴う複雑な法務・相続手続きをオーダーメイドでサポートしております。「何から話し合えばいいか分からない」という経営者様も、ぜひお気軽に当事務所の弁護士にご相談ください。

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