深刻な人手不足が続く2026年現在、中小企業において従業員の定着率向上は最重要の経営課題です。せっかく育てた優秀な人材が「育児」や「家族の介護」を理由に離職してしまうことは、企業にとって計り知れない損失となります。
近年、育児・介護休業法の改正が相次ぎ、企業に求められるサポート体制は年々手厚くなっています。「うちは人数が少ないから休まれると困る」という本音を抱える経営者様も多いかと思いますが、法整備を怠れば違法状態となるだけでなく、従業員の不信感を招き、結果的に突然の離職を引き起こしかねません。
今回は、中小企業が早急に見直すべき「男性育休」と「介護離職防止」の実務対応について、弁護士が解説します。
1. 男性育休の取得促進と「代替要員」の確保に向けた実務
近年、男性の育児休業取得率は急上昇しており、新入社員の多くが「将来的に育休を取得できるか」を企業選びの基準にしています。法律上、企業には従業員(男女問わず)から妊娠・出産の申し出があった際、個別に育休制度を周知し、取得の意向を確認する義務が課されています。「男が育休をとるのか?」といった発言は、それ自体が法違反やハラスメントに直結するため厳禁です。
また、2025年の法改正により、3歳から小学校就学前の子どもを育てる従業員に対する「柔軟な働き方(テレワーク、短時間勤務、始業時刻の変更など)」の制度化が事業主の義務として強化されています。
中小企業にとって最大の壁は「抜けた穴(代替要員)をどうカバーするか」でしょう。これに対しては、属人的な業務の棚卸しやマニュアル化を進めるとともに、国の「両立支援等助成金」を活用することが有効です。育休取得者の代替要員を新規雇用した場合や、周囲の社員に業務をカバーさせて手当を支給した場合に受給できる助成金があります。法務と労務の両面から、会社も残された従業員も損をしない制度設計が求められます。
2. 「介護離職」の危機!団塊ジュニア世代を抱える企業の対策
育児問題以上に、これからの中小企業を直撃するのが「介護離職」です。企業の中核を担う40代〜50代の管理職やベテラン社員が、親の介護のために突然フルタイムで働けなくなるリスクが高まっています。
法律では、対象家族1人につき通算93日までの「介護休業」や、年5日(2人以上の場合は10日)の「介護休暇」が認められています。さらに、直近の法改正により、企業は従業員が40歳になったタイミングで、介護休業等の制度について「個別の周知・意向確認」を行うことが義務付けられました。また、介護に直面した従業員がテレワークなどを選択できる措置を講じることも求められています。
介護は育児と異なり「いつまで続くか分からない」「突然始まる」という特徴があります。従業員が誰にも相談できずに限界を迎え、突然退職届を出してくる事態を防ぐためにも、就業規則に介護に関する制度を正しく規定し、「会社としてサポートする姿勢」を社内にアナウンスしておくことが極めて重要です。
3. 制度利用に伴う「ハラスメント(パタハラ・ケアハラ)」防止義務
制度を整えても、職場の風土が追いついていなければ意味がありません。 「育休をとるなら昇進はないと思っておけ(パタニティ・ハラスメント)」「介護を理由に早く帰るなんて無責任だ(ケア・ハラスメント)」といった上司や同僚からの心無い言動に対し、企業は「ハラスメント防止措置義務」を負っています。
万が一、社内でこうしたハラスメントが放置され、従業員がメンタルヘルス不調に陥ったり退職に追い込まれたりした場合、企業は「安全配慮義務違反」として多額の損害賠償を請求されるおそれがあります。就業規則への懲戒規定の明記や、社内相談窓口の設置、管理職向けの研修実施など、予防のための具体的なアクションを講じておく必要があります。
まとめ:法改正に合わせた「就業規則のアップデート」を
「数年前に作った就業規則のまま放置している」「ネットの雛形をそのまま使っている」という企業様は、要注意です。相次ぐ法改正に対応できていない就業規則は、いざという時に会社を守ってくれません。
従業員のワークライフバランスを支援する適法なルール作りは、結果として「働きやすい会社」という強力な採用ブランドになり、企業の持続的な成長に直結します。
当事務所では、最新の育児・介護休業法に対応した就業規則の改定、代替要員確保に向けた法的アドバイス、ハラスメント防止体制の構築など、中小企業の実態に即したサポートを提供しております。「うちの会社の規則、今のままで大丈夫か?」と少しでも不安を感じられた経営者様は、ぜひお気軽に当事務所の弁護士までご相談ください。
